セカンドビザ考

※ご注意
この記事は、ワーキングホリデーでオーストラリアに来た方、または行こうと考えている方に向けて書かれたものです。
事例として示したものはすべて事実ですが、単なる一例にすぎないことをご承知ください。





オーストラリアには、ワーキングホリデーで来る若者が多い。

ワーキングホリデービザは申請が簡単で、(学生ならばオンライン申請のみで、最短で翌日にはビザが下りるとのこと)
1年間その国で自由に過ごせるビザだ。
学校には16週間まで通えて(抜け道はあるようだが)、働くのも旅をするのも、何をするのも自由だ。

このビザは1年延長できる。
これには条件があって、延長申請のためには政府の規定した場所で88日間以上働かなければならない。
(ただし、政府の定めるこれらの条件は変わるおそれもあるので、事前の詳細なチェックが必要である。)


この条件が問題なのである。

主に農場の仕事が見つかりやすいので、多くの人は農場で働くことになる。
農場の仕事は、インターネットで、旅行会社で、掲示板の張り紙で、などあらゆる見つけ方がある。
非常に激しい肉体労働を課される場合もあるが、乗馬をしにくる観光客を相手にするといった、「楽しくて仕方がなかった」と経験者に評されるような仕事もある。
農場はバスや電車の交通網が敷かれていない僻地にある場合が多く、あらかじめ見学にいけるわけでもないのでギャンブル的要素が大きいのだ。


仕事自体は作物の摘み取りなど単純なものが多いが、日本の7倍といわれる紫外線量を浴び続けることは、他人種と比較して肌の弱いアジア人には大きなリスクである。

友人の体験談を紹介しよう。

彼女はケアンズからバスで3時間という僻地のハーブの摘み取り農家で仕事を得た。
朝7時から午後3時まで、昼1時間のランチ休憩を除いてはノンストップで野外でしゃがんだ姿勢での摘み取り。
手を休めているとすぐに監督がやってきて「手が止まってる!」と注意をしにくる。
男女で仕事内容に差はない。

宿舎は清潔とはいいがたく、テレビやネット環境は当然ながら整備されていない。食事はすべて自炊となるが、最寄のスーパーはバスで1時間ほどいったところにあり、平日仕事終わりに行くためのバスがないため、週末にまとめて買出しに行くしかない。食料のみならず身の回りのすべてのもの(石鹸など含む)をそうやって仕入れるほかない。
給料は週100ドル。


彼女はその農場での労働を、「刑務所のようだった」と表現していた。
このままでは体を壊してしまうと判断した彼女は、日本に帰る用事ができたと言って、88日間の期限前に仕事を辞めてきたという。
帰ってきた彼女の背中には、赤黒い日焼けの跡ができていた。


根性論で片付けてしまえばそれまでだが、話を聞く限り、普通の女子大学生が全うできる仕事ではない。
中には慢性的な腰痛をわずらうなど、本当に体を壊してしまう人もいるそうで、
セカンドビザを餌にして、オーストラリアが政策として、いわば弱者である外国人に重労働をさせているのだとしたら許しがたい。


とはいえ、前述のとおり農場によっては、比較的楽かつ食事がついているところもある。そのほか細かい条件(土日を88日間のカウントに入れるか、など)に違いがあるので、あらかじめできる限りの電話などで確認しておくべきだろう。英語力に自信がない場合、日本人が多い農場に送られることを覚悟しても日本人エージェントに頼むのが賢明といえるかもしれない。

現地エージェントの中には、1000ドル以上の紹介料をとって、その後は催促の電話を入れるまで全く音沙汰なし、などという悪徳業者もいるのでご注意。
不平不満を口にしないのは日本人の美徳だが、それにつけこむ輩もいるということを忘れてはならないだろう。


オーストラリアで様々な経験を積むことは有意義だが、何でも試練と思って耐えるのではなく、他の選択肢を常に視野にいれて柔軟に動きたいものである。



続編できました。「続セカンドビザ考」
http://d.hatena.ne.jp/nyandachuratoh/20111108/1320729114

違った角度から見てみました。